ぐんまこどもの夢大賞

第28回 ぐんまこどもの夢大賞 童話部門・最優秀賞


「かえるの雨がさ」 作/鈴木 紅秋 さん (渋川市立橘小学校 2年)

 

 雨がつづく六月、めずらしく雨のふらないあつい一日がありました。リクシーは、にわでひからびかけたトノサマガエルを見つけました。
「もしかしてまだ生きているかもしれない。」と思ったリクシーは、ジョーロに水をくみ、かえるにかけはじめました。かえるの体はなかなかもとにはもどりません。もうだめかと思いはじめたそのころです。さっきまでひからびていたかえるは、とつぜんクルッと空中一回てんをしました。
「ありがとうケロケロ。おれいにケロケロ、このかさをケロ、あげますよケロケロ。」と言うと、どこかへ行ってしまいました。そのかさは、よくあるとうめいのかさでしたが、なぜかワンタッチのボタンが八つもありました。

 つぎの日は雨でした。リクシーはかえるにもらったかさをさそうと思って、音ぷのマークのボタンをおしてみました。さっきまでとうめいだったかさの一ぶ分がむらさき色になりました。雨がポツリポツリとかさにあたるたびに、きれいなオルゴールのような音がくがながれてきます。リクシーはかさの出す音がくに合わせて、雨の中をおどるようにとびはねました。

 かえるからもらったふしぎなかさのことをもっと知りたいと思ったリクシーは、まい日雨がふってほしいとねがっていました。リクシーはてるてるぼうずをつくり、ひっくりがえしにしてまどの近くにつるしました。

 つぎの日、リクシーのおねがいがきいたのか、雨がふりました。リクシーはそとに出て、音ぷマークのボタンをおしてかさをさしてみました。リクシーは、こっちの水たまりからあっちの水たまりへと、かさからながれてくる音がくにあわせてジャンプしました。その水たまりの中に、とくべつ大きくかがみのようにピカピカした水たまりが一つありました。その大きな水たまりにジャンプしようとしたその時、
「ふまないでー。」と小さなさけびごえがリクシーの耳に入ってきました。リクシーはころびそうになりましたが、なんとか水たまりのそとにちゃくちしました。そのかがみのような水たまりの中をのぞいてみると、リクシーのあたまの上の空の風けいがうつっていました。青空と白いくも、そしてなぜか空の中に小さないけのようなものがうかんでいました。その時、水めんにうつっている白いくものほうから、小さなこえが聞こえてくるのに気がつきました。よく見ると、小ゆびの先くらいの、白いふくをきた小さな人たちが、リクシーに手をふっていました。耳をすませて聞いてみると、こんなことを話していました。
「あのいけの方はのぞいちゃだめだー。のどがふくらむかいぶつに、のみこれるぞー。」
「なにがあったの。あなたたちは一体にそこでなにをしているの。」と小さいこえでリクシーが白い人たちに聞くと、
「おれたちがいそいではしっていたら、やつらにひとのみにされたんだ。でもやつらの口に合わなかったみたいで、はき出されたんだ。おれたち、これから大じなしごとがあるっていうのに、この水たまりにとじこめられて、こまってるんだ。」それを聞いてリクシーは、たすけてあげたいとも思いましたが、「かいぶつ」なんてよばれている、生きものたちが気のどくにも思いました。「かいぶつ」からも話を聞かないと、ほんとうのことが分からないと思い、リクシーはふしぎな水たまりのせかいの中の、いけのほうをのぞいてみました。そこにいたのは「かいぶつ」ではなく、かわいい小さなアマガエルたちでした。その中に、とくべつ大きなかえるが、えらそうに王かんをあたまにのせていました。それは、リクシーが二日前にたすけたトノサマガエルです。そのトノサマガエルは、リクシーに小さなこえでこう言いました。
「この前はケロケロ、かわいていることろをケロ、たすけてくれてケロ、ありがとうケロケロ。そのかさのケロ、ケロケロマークをケロケロ、おしてごらんケロケロ。」リクシーは言われた通り、かえるのマークをおしてかさをひらきました。むらさき色のかさにみどり色が入り、その二色のかさをさしたままリクシーは水たまりの中にすべりこみました。

 気がつくと、リクシーはいけのすいれんのはっぱの上にいました。どうやら、リクシーは小さくなって水たまりのせかいに入りこんでしまったようです。
「このかさはケロ、思いやりのある人にしかケロ、つかえないケロ。ぼくらのくにのケロでんせつのケロ、かさなんだケロケロ。」
さっきのトノサマガエルはリクシーと同じ大きさになっています。かえるたちのせつめいで、とつぜんやってきた白い小さな人たちが、かえるたちにあつい風をふきかけ、かえるたちをかわかしているということが分かりました。そこでかえるのくにで一ばんゆうかんなトノサマガエルの王さまが、なんとかしようと水たまりのせかいからとび出したまたま出会ったリクシーにかさをくれたというのです。
「やめてって言えば、いいんじゃない。」というリクシーに
「なんどもケロ、言ったさケロケロ。でもケロ、おれたちのことをケロ、かいぶつよばわりしてケロケロ、聞いてくれないケロ。なにもケロ、わるいことなんかケロケロ、してないのにケロケロ。」とトノサマガエルはこたえました。 「あなたたちのだれかにのみこまれたらしいよ。いえにかえれずにこまっているって。白い人たちにあやまってから、おうちにかえす手つだいをしてあげたらどう。」とリクシーは言いました。リクシーは、かえるたちと白い小さな人たちのあらそいを、なんとかするまではかえれないと思いました。

 リクシーはかえるたちと話すうちになかよくなり、おうちにしょうたいされました。かえるたちのおうちには、そうじどうぐがなかったので、草をまとめてほうきをつくり、そうじをしました。また、リクシーがひらおよぎがにがてだと話すと、かえるたちは上手なひらおよぎをリクシーに教えてくれました。みんなでいけでおよぎ、すいれんのはっぱのかげで、かくれんぼをしてあそびました。

 長いこと水につかっていて体がひえてしまったリクシーは、あたたかそうなおひさまのマークのボタンをおしてかさをひらきました。かさの一ぶ分がすこしずつ赤くなってきたかと思うと、かさの内がわに小さなお日さまがあらわれました。リクシーの体はポカポカになりました。でも、気がつくとかえるたちもリクシーといしょにかさにあたって、かわいてしまいました。リクシーは、いそいでかさをとじてから、もしかしたらやくに立つかもしれないと、水てきマークのボタンをおしました。こんどはかさの一ぶ分が水色になり、かさの内がわから雨がふってきました。リクシーはまたずぶぬれになってしまいましたが、かえるたちは元気になり、ピョンピョンはねてよろこびました。

 その日のよる、リクシーがはっぱのおふとんをじゅんびしていると、ながれぼしがながれてきました。ねがい言を考えている間に、ながれぼしはきえてしまいました。リクシーのかさのボタンに、ほしのマークがあるのを見つけました。そのボタンをおすと、かさの一ぶ分が黄色になりながらひらき、そのあとながれぼしがながれてきました。リクシーは、「みんなが、なかよくしあわせにくらせますように。」とおねがいをしました。かえるたちも、ケロケロとおねがいをしました。そのよるは、たくさんのほしの雨がふりました。

 つぎの日は晴れでしたが、トノサマガエルといっしょにかさで雨をあびながらおさんぽをしました。リクシーはオレンジ色のタンポポマークが気になり、ボタンをおしてみました。なんだか春のにおいがしてきたかと思うと、かさが大きなたんぽぽの花になっていました。それはすてきな日がさでした。だんだんと、かさがかるくなってくるようにかんじました。風がふきかさがとびそうになったので、リクシーとトノサマガエルはかさにしがみつきました。たんぽぽのかさは、いつの間にかわた毛となって、フワフワと空にうかんでいたのです。二人はあっという間にくもの上まできていました。くもの上には、あの白い小さい人たちがたくさんいました。
「のみこんだりケロ、はき出したりしてケロ、ごめんなさいケロケロ。これからあなたたちのいえにケロ、かえれるようにケロ、お手つだいしますケロケロ。」とトノサマガエルがすぐにあやまると、
「かいぶつだなんて言ってわるかったな。おれたちはあつい南風だ。おれたちが水たまりを出ないと夏がこないんだ。おれたちをここからふきとばしてくれるか。」かさには青いうずまきもようのボタンがありました。ためしにリクシーがそのボタンをおすと、たちまちかさのてぺんからつよい風がふき出し、南風たちは手をふりながらとんで行きました。

 南風とかえるたちは、なかなおりができたので、そろそろリクシーもおうちにかえるころです。さいごにリクシーは、水てきマークのぼたんをおし、トノサマガエルに雨がさをさしてあげました。トノサマガエルは、
「きみのおかげでケロ、南風となかなおりができたケロケロ。そしてわたしたちもケロケロ、かさがつかえるようになってケロ、いつでもケロ、雨にあたれるケロケロ。きみにまた会いたくなったらケロ、ながれぼしの雨をケロ、ふらせるよケロケロ。」と言い、さいごにピンク色のおうちのマークをおしました。するとかさは八色になり、リクシーはクルクル回るにじ色のかさに目を回してしりもちをつきました。それもあの大きな水たまりの中に。

 あたたかい風がふいてきました。空には大きなにじがかかっています。夏がきました。